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Sketch #7
「 近頃すすきのを歩けば、観光客向けの真新しいホテルの姿が目立つ。札幌市内のホテル代高騰の話を聞けば、いかに街の景色がそれで味気なくなったとしても需要を優先するのは仕方ないのだろう。でもそこには昔、酔客を引き寄せる賑やかなネオンに彩られた飲食店ビルがあったんだ。私もその酔客の一人だった。「あの酒美味かったなぁ。マスター、元気にしてるかなぁ」…今あるのは”思い出”だけ、もうそこに足を踏み入れることはできない。
先日、近所の朝まで賑やかだった居酒屋がとうとう店を閉めた。昨年には、馴染みの大将の焼鳥屋も店を閉めている。高齢で体調不良と聞けばそれもやむを得ないけれど、通っていた店のなくなるのは何とも寂しい。ビルだけでなく、私を酔客にしてくれる店までもなくなっていく。
週末ともなると、今もすすきのは若い酔客で溢れている。そんな酔客を引き寄せる店はやはり朝まで賑やかだ。飲んでは騒ぎ、飲み過ぎては路上に転がっている−若者は昔も今も変わらない−ニヤっとしてドキっと我に返る。この姿は、いつかの私なんだ…馴染みの大将の焼鳥屋で口火を切り、知らない銘柄のスコッチやバーボンを飲ませてくれるバーのマスターと蘊蓄を語り、飲み足りないからと近所の居酒屋に朝まで居座り、あげく帰る頃には酩酊して足をもつれさせて道端に転がって…そうか、すすきのって街は、昔も今も変わってないんだ。私の見た目には味気なくなっても、若者にとっては飲んで騒げる楽しい街なんだ。そうか、変わったのは、この街に居場所をなくしている、今の私なんだ。」
これからの行く先は? 続きは[Introduction]の末尾に。。。
by ジャズバー エイティワン店主・玄午 |